カバン・袋物・帆布加工一式 一澤信三郎帆布

信三郎のええかげんな話

Date 2019.09.17

#99 川上村の大欅(オオケヤキ)

うちの職人に奈良県の吉野の山奥、川上村の出身がいます。
職人になりたいと面接に来た時に「君、特技はなんや?」「川で鯉を手づかみできます」の一言で、「そら、手先が器用なんやろうなあ」と、採用を決めた男です。
その彼の出身地、川上村の由緒ある丹生川上神社のご神木の大欅の話です。
その欅は南北朝時代に芽吹いた高さが50メートルもある樹齢500年の大木で、傷みが少ない生木として長年、専門の銘木業者の誰もが、喉から手が出るほど欲しがる木やったんやそうです。
私は昔から無垢の材を加工した、机や椅子・棚などの木工品が好きで、日常的に使っています。長く使っているうちに木がええ味になって、馴染んでくるんです。10年ほど前に、欅の銘木の売り立てがあることを聞いて、昵懇の木工芸家の宮本貞治さんに見に行ってもらいました。宮本さんから、「あれはめったに出ぇへん、ええもんですわ。」と、写真を見せられ、幅も厚みもあり、木目も素直で、その堂々とした姿に一目ぼれしてしまいました。無理して入札に参加してもろうて、気に入りの1枚を何とか手に入れたんです。
後日、銘木屋さんから、その木の来歴を聞いてびっくり。その木がまさに丹生川上神社のご神木やったんです。大型ダム建設のためにその神社が水底に沈んでしまうことになって、移転費用の一部にと、惜しまれながら切られてしもうたそうなんや。
風雪に耐えて風格のある木を加工してしまうのは、もったいのうて、宮本さんに、あまりいじらずに元の姿のままでと、うちの事務所のテーブルにしてもらうよう頼みました。
漆もあっさりと拭いてもろうて、堂々としたテーブルになり、皆が集う場として活躍してくれています。
清流に映える紅葉には少し早いやろうけど、来月の初めに社員旅行で、川上村を訪ねます。
新たに建立された丹生川上神社に皆で参拝して、これからが平和で安穏な世の中でありますよう祈願してきたいと思っています。
そやそや、少しは商売の安泰も願わなあきませんなあ。