カバン・袋物・帆布加工一式 一澤信三郎帆布

信三郎のええかげんな話

Date 2016.01.25

#49 閑話休題 ①

この間、なんとのう本棚を眺めていると、単行本の隙間に寺田寅彦全集(昭和36年発行・1巻定価200円)の第11巻・短章を見つけました。俳句雑誌 “渋柿” に掲載されたもの。
学生時代に読んで、軽いような重いような異次元の世界に引き込まれた覚えがあります。
寅彦は森羅万象に対する洞察力に優れた高名な物理学者であり、又、夏目漱石の門下生で、人間の機微に通じた洒脱な文人やったそうです。
“ 天災は忘れた頃にやってくる” の名言は、寅彦だと人口に膾炙しています。
何十年ぶりに読み返してみました。相変わらず頭がついていけてるような、いけてへんような。

そのうちから幾つかを。

“ 目は、いつでも思った時にすぐ閉じることができるようにできている。
しかし、耳の方は、自分では自分を閉じることができないようにできている。
なぜだろう。”

“ 鳥や魚のように、自分の目が頭の両側についていて、右の目で見る景色と、左の目で見る景色と別々にまるでちがっていたら、この世界がどんなに見えるか、そうしてわれわれの世界観、人生観がどうなるか・・・・。
いくら骨を折って考えてみても、こればかりは想像がつかない。
鳥や魚になってしまわなければこれはわからない。”

“ ある若い男の話である。青函連絡船のデッキの上で、飛びかわす海猫の群れを見ていたら、そのうちの一羽が空中を飛行しながら片方の足でちょいちょいと頭の耳のへんをかいていたというのである。どうも信じられない話だがといってみたが、とにかくかいていたのだからしかたがないという。この話をその後いろいろの人に話してみたが、大概の人はこれを聞いて快い微笑をもらすようである。なぜだかわからない。”