カバン・袋物・帆布加工一式 一澤信三郎帆布

信三郎のええかげんな話

Date 2020.01.18

#103 えべっさん

関西では、1月10日が「十日ゑびす大祭」です。
京都は四条の南座近くの大和大路に恵比寿神社があります。
面白いのは、恵比寿さんは耳が遠いんで、みんな本殿でお詣りをしてから左の壁に回って、どんどんと叩いて、「えべっさん、聞こえてますか?よろしゅう頼んまっせ。」と声をかけるんです。みんなが強く叩いて壁が壊れてしまったことがあるらしく、「恵比寿様のお肩をたたくお詣りです。ノックをされるように優しく・・。」と書いてあるのもご愛敬です。
恵比寿さんにお詣りに行ったときは、帰りに一杯飲みに寄ってはあかんのです。そこに福を置いてきてしまうんやそうで、福笹を頂いたら道で会った人ともしゃべらんと真っ直ぐ家に福を持って帰らなあかんらしい。
そやから、わたしらは飲み歩いた後に、忘れんと恵比寿さんにお詣りするんで、境内は遅うまでにぎわいます。

うちの氏神さん「粟田神社」にも、伝教大師最澄作と伝えられる、恵比寿さんのええ御神像があるんです。現存する最古の寄せ木造りの恵比寿像なんやそうです。1月9日から11日までご開帳されて、拝ませてもらえます。
平成9年に解体修理されて、平成10年から「出世えびす祭」が始まりました。
その期間は氏子が交代で、恵比寿さんの番をして甘酒をふるまいます。
生姜の入った熱い甘酒は、寒い時期には身体に沁みわたります。
わたしは今年、恵比寿さんの当番もしたんで、えぇ年になりますやろか。
「神頼みせんと、真面目に仕事しいや」と天からの声が聞こえてきそうな・・。

あれ、うちの店のウインドウにも奇妙なえべっさんが!
うちのスタッフは、こんなことには熱心なんです。困ったもんですわ。

Date 2020.01.01

#102 明けまして御目出度うございます

明けまして御目出度うございます。
令和二年が、平穏無事な年でありますように。
暮らしやすい地球環境でありますように。

昨年は、珍しく何回か新聞広告を出しました。
京都新聞には一面の “ 題字下 ” に、朝日新聞には “ 天声人語 ” の横に出したんです。
誰か気が付いてくれはったかなあ。

何屋の広告かもわからへんし、住所も電話番号も、ウェブサイトも書いてへん。
最後の私の似顔絵は、「これ社長の個人広告ですやん・・。」と笑われる始末です。
普段から有料広告はせーへんし、こんなんがうちらしいかな。

相変わらず、ゆる~い会社ですが、今年もよろしくお願い申し上げます。

Date 2019.11.21

#101 ほんまにおおきに

ようも百回も続いたと思うたら、ほっこりしてしもうて、しばらく堪忍してほしいなあ・・・。
先日、うちの催事で初めて銀座の松屋に行ってきました。松屋さんは今年が創業150周年やそうで、いろんなイベントに力を入れてはるんです。150周年お目出度うございます。
12日が初日やったんで、おそるおそる覗きに行きました。びっくりしたんは、このポスターです。地下鉄の改札を出たら真っ先に私の下手な字が。
誰や、勝手にこんなもん作ったんは。
それ以外の7枚のポスターはなかなか見事で、うちの仕事の道具や使い古したかばんがアートになっていました。
会場には、朝からぎょうさんの人が来てくれはって、大賑わい。
私はこういう場所はどうも居心地が悪うて、つい逃げ出したくなるんです。そやけどお客様から握手を求められたり、写真に納まったりと、柄に合わんこともしてきました。
わざわざ足を運んでくれはった関東方面のお客様から、「かばんがたくさんあって嬉しかった。」とか、「やはり実物を見たいんで1年に一度は来てください。」など嬉しいお言葉をたくさんいただきました。社員・職人が頑張って準備をしてきた甲斐があったと、ほっと安堵してます。

京に戻れば、いつの間にか錦繡の時節となっていました。疎水べりで朽葉色に変わった桜並木をぼーっと眺めたり、事務所の猫の額ほどの庭にある柿の小さな実や、千変万化の色葉にじっと見入る自分が居ます。歳のかげんですかなあ。
ほんまにおおきに。

Date 2019.10.19

#100 ☆番外編 一澤恵美の几帳面な話

いつの間にか『信三郎のええかげんな話』が100回を迎えました。
私(一澤恵美)毎月、毎月、「もうすぐ一か月よ、そろそろ次の話を考えんと。」と、99回も言ってきたんですねえ。
なかなか書く気になれない言い訳は、夏は「暑さで脳ミソが溶けてしもうて、半脳死状態や」、寒い時は「冬ごもり、脳が凍死で休業や」と、なかなか気分が乗りません。おまけに、お酒は365日欠かしませんので(心臓と同じで肝臓も休ませたらあかんそうで??)、すでに脳は「アルチュウーハイマー」になっているかもしれません。
そんな人が毎回こだわることはただ一つ、“ 笑いが入らなあかん ”
この調子で毎月一度書いてもらうのは、本当に大変なんです。
私が下書きをすれば、ぐちゃぐちゃに直されて、「こんなに直すんやったら最初から書けば」と喧嘩のタネになります。
…よくぞ100回も続いたものです。
原稿が何とか出来上がると、俄然スイッチが入ります。写真にはとことん凝るんです。カメラの得意な社員に撮影を頼むんですが、撮った写真を見せるとたいがい「こんなん全然あかんわ」とダメ出しが続きます。
♯73の「永遠のランドセル」では、孫や社員まで駆り出して植田正治さんの写真のオマージュを撮ることになり、写真によく似た衣装や、自転車やおもちゃのピストルまで用意する凝りようでした(本人もこっそり登場しています)。
♯84「ああもったいない」では、自分の気に入った古いシャツを、白川の川面にはためかせたいと、5人の社員が駆り出されて、川に入ってロープの両端を持たされて撮影しました。
“ 仕事もこれぐらい頑張れば ” 、と思うこともありますが、こんなことが元気の秘訣でしょうか。
さて、101回目は、何を書くのでしょうか。
「えー、まだ続けなあかんのかぁ」と、隣でぼやきが・・。

Date 2019.09.17

#99 川上村の大欅(オオケヤキ)

うちの職人に奈良県の吉野の山奥、川上村の出身がいます。
職人になりたいと面接に来た時に「君、特技はなんや?」「川で鯉を手づかみできます」の一言で、「そら、手先が器用なんやろうなあ」と、採用を決めた男です。
その彼の出身地、川上村の由緒ある丹生川上神社のご神木の大欅の話です。
その欅は南北朝時代に芽吹いた高さが50メートルもある樹齢500年の大木で、傷みが少ない生木として長年、専門の銘木業者の誰もが、喉から手が出るほど欲しがる木やったんやそうです。
私は昔から無垢の材を加工した、机や椅子・棚などの木工品が好きで、日常的に使っています。長く使っているうちに木がええ味になって、馴染んでくるんです。10年ほど前に、欅の銘木の売り立てがあることを聞いて、昵懇の木工芸家の宮本貞治さんに見に行ってもらいました。宮本さんから、「あれはめったに出ぇへん、ええもんですわ。」と、写真を見せられ、幅も厚みもあり、木目も素直で、その堂々とした姿に一目ぼれしてしまいました。無理して入札に参加してもろうて、気に入りの1枚を何とか手に入れたんです。
後日、銘木屋さんから、その木の来歴を聞いてびっくり。その木がまさに丹生川上神社のご神木やったんです。大型ダム建設のためにその神社が水底に沈んでしまうことになって、移転費用の一部にと、惜しまれながら切られてしもうたそうなんや。
風雪に耐えて風格のある木を加工してしまうのは、もったいのうて、宮本さんに、あまりいじらずに元の姿のままでと、うちの事務所のテーブルにしてもらうよう頼みました。
漆もあっさりと拭いてもろうて、堂々としたテーブルになり、皆が集う場として活躍してくれています。
清流に映える紅葉には少し早いやろうけど、来月の初めに社員旅行で、川上村を訪ねます。
新たに建立された丹生川上神社に皆で参拝して、これからが平和で安穏な世の中でありますよう祈願してきたいと思っています。
そやそや、少しは商売の安泰も願わなあきませんなあ。