カバン・袋物・帆布加工一式 一澤信三郎帆布

信三郎のええかげんな話

Date 2018.10.22

#87 “ 無駄は省かなあかんけど、手間・暇 惜しんだらあかん ”


帆布は厚く、硬くて扱いにくい素材で、今でも切り株の上で木槌でこんこん叩いて成形して折り目を付けてから、ミシンで縫製してます。機械でできる仕事は機械に任せたいんやけど、なかなか、そううまくはいきません。例えば「薩摩結び」と言う結び方は、麻のロープを20センチくらいほどいてから、その部分を元のロープに編み込んで、絶対にほどけんようにする作業です。
リュックの革は、セール針と言う三角の針に撚った蝋糸を通し、手作業で縫い付けてます。目の詰まった帆布に一目一目、針を刺しては抜いてゆく、力の要る作業です。
リュックに使う赤と黒のロープの先は、切りっぱなしにすると解けてくるんで、太い木綿の蝋糸を巻き付けて解けんようにします。
このような作業は昔から同じようにしてるんで、うちにしたら当たり前のことやと思ってました。
先日、ふと目にしたブログに、うちでやっている、ロープに蝋糸を巻き付ける作業をいたく感動してくれはったことが書かれていました。
その方は、何十年か前に買うてくれたリュックと、最近買うたリュックが、今も全く同じように作られていることに、驚かれたようなんです。
ブログには、「大昔から存在するものが寸分変わらず中古ではなく新品で入手できるのだ。これをしあわせと呼ばず何と呼ぶ?」
「いくら一澤帆布とはいえ、金具類、糸、布、紐などがしっかりしたものでないと存在できないはずだ。これは、そういったものを作ることのできる小さな会社やお店が存在してこそ、可能なはずなのである」
「僕は京都の一澤帆布に行くたびに、全国の街が京都のように、または一澤帆布のように存在できる状況であったら、どんなに良い事だろう、と思うのである。」


ほんまにその通りで、うちがこれまでどおりの品質を維持、向上するためには、良質の綿帆布、麻帆布はもとより、天然素材のバンドやテープを織ってくれる会社や、強固な糸や金具を作ってくれる会社は無くてはならない存在なのです。材料だけやなくて、毎日使うハサミを定期的に研いでくれるお店や、作業に使う道具の一つ一つを製造してくれている工房も、無くなってしもうたら困るんです。
「紐の先端はなんと、糸を巻いて蝋で固めてある。こんなディテールも昔と変わっていない。・・・今時こんなしごとをわざわざやるメーカーはどのぐらいあるだろう?」

こんなところに目を留めてきちんと見てくれはる人がいて、こんなに喜んでいただけるんやったら、やっぱりかばんを丈夫で長持ちさせるために、手間・暇惜しんだらあかんのですなあ。
“ これしかできまへんが、これだけはよそさんには負けまへん ” という専門店が日本中に増えてほしいもんです。
時代に遅れ続けてるうちのあり様は、そう的外れでもなかったんやなあ。