カバン・袋物・帆布加工一式 一澤信三郎帆布

信三郎のええかげんな話

Date 2018.05.25

#82 高山の文化と伝統

飛騨高山には、友人の縁で様々な季節に何度か訪れています。
先月、春祭りを観に出かけました。これが二度目の春祭りです。前回はつぼみが堅かった桜が今年は満開で、祭りに花を添えていました。
祇園祭は、「山鉾」やけど、高山では「屋台」と呼び、京都と同じように各町内ごとにお守りして巡行します。
今年は夜祭があいにくの雨で中止になってしまいました。提灯を灯した屋台が夜の高山の細い道をゆるゆると曳かれ、木製の大きな車輪が目の前を通るのを見るのは、なかなかに風趣があるもんなんですが、残念なことでした。

独特な装束の獅子舞が練り歩き、屋台のからくりの奉納もあって盛大なお祭りなんやけど、驚くのは、祭りが終わってからです。屋台がそれぞれの町内に戻って、蔵に安置されると、高山の町が急に静かになります。「町中に溢れていた観光客、いったいどこに行ったんやろう?」と訝るぐらい、町中から消えてしまうんです。土産物屋も戸を閉めて、シーンとして夕暮れの気配になります。みなさん、宿に帰って温泉に浸かったり、帰途に就いてはるんやろうね。
ここからが、高山の人たちの「直会(なおらい)」と言うか、地元の人たちの本当の楽しみが始まります。
今では少なくなったらしいんですが、昔からそれぞれの家で「呼び引き」という祭りの打ち上げをしてはったんです。今年も高山の古い料亭での「呼び引き」に呼んでもらいました。

大広間に皆が揃うと、「めでた」の発声をと、一人の旦那さんが指名され、「めーでーたーー・・」と、ゆるゆると歌いだすと、皆が唱和します。私が知ってる、めでためでた・・とは全く音調の違う、ゆったりした節回しなんです。
歌い終わるとそこからが無礼講、漸くそこで皆が酒を注ぎに回ります。
三味線も、踊りもあって、何とも愉快な宴会がえんえんと続くんです。宴たけなわで、気が付いたら私も興に乗ってみなさんと一緒に、何やら見よう見まねで踊ってしまってました。そやけど我ながら手足がばらばらで不器用やなあ。
時々「どしゃまくりの客」(どさくさ紛れの客)が混じって、用意した料理が足りなくなるのもご愛敬とか。

高山のことを「小京都」と呼ぶのはほんまに失礼なことで、高山には京都とは違った伝統文化が継承され、大きく花開いて、脈々と伝わってるんです。
陰影礼賛、けばけばしいネオンのない街は、ほんまにええなあ。
深夜、暗い夜道をふらふらと何とか宿に帰り着きました。