カバン・袋物・帆布加工一式 一澤信三郎帆布

信三郎のええかげんな話

Date 2017.03.16

#65 ハサミ研ぎ

うちの職人たちが使ってるハサミは、昔から仏光寺近くの同じ刃物屋さんから買うてます。
大バサミ、中バサミ、糸切バサミは、職人たちがそれぞれ「マイハサミ」を使ってるんです。そしてこの刃物屋さんが一ヶ月に一度ハサミを取りに来てくれて、研いでくれるんです。そやから職人たちは2丁のハサミを、代わりばんこに研ぎに出して使うてます。ハサミには間違わんように、職人の個人名を入れてます。片刃ずつ研ぐんで、外したネジは元の組み合わせにきちんと戻るように、番号順に置いていきます。
いつ頃からこの刃物屋さんにお世話になってるんやろう・・・。
うちの祖父の時代からなんで、80年ぐらいになりますかなあ、ほんまに古い付き合いです。
幼い頃に祖父にこのお店に連れて行ってもろうて、ハサミや包丁を研いではるのを面白いなあと、 眺めていた記憶があります。
その時に、刃物を研いでる砥石で水が鼠色に濁っている中に、赤い金魚が泳いでいたのが、強く印象に残ってます。研ぎの水桶のボウフラを食べてくれるんで、夜店で手に入れた金魚を飼っているそうやけど、こんな濁った水で暮らしてたら、眼が見えんようにならへんかなーと、心配したことを未だに覚えてるんです。子供心にびっくりしたんやろうね。
その後、今のご主人の代になって、「うちは跡を継いでくれる者が居りませんので、私が仕事ができんようになったら終わりですわ。」と言われてました。息子さんたちはそれぞれ勤め人になってしもうて、あとを継いでくれんそうなんです。えらいこっちゃなあ・・と思っていたら、ひょんなことから、娘婿さんがこの家業を継いでくれることになりました。今では、舅さんと婿さんが仲良う交代で配達に来てくれてます。

ハサミは研いでは使い、研いでは使いしているうちに、だんだん刃が小そうなっていきます。新人の職人に、さら(新品)で渡したハサミは、職人の大事な道具で、長年の歴史やから、退職するときには餞別に渡してます。この写真のハサミ、元々同じハサミとは思えまへんやろう?
頭(?)とハサミは使いよう。
我が頭は錆び付いたままですが・・。