カバン・袋物・帆布加工一式 一澤信三郎帆布

信三郎のええかげんな話

Date 2019.01.23

#91 ちょっとええ話

先日、うちの店のアルバイトで、フロリダから日本語を勉強しに来ているデシ君が青い顔して出勤してきました。鴨川堤を自転車で走っていて大事な財布を落としたんやそうです。
その財布には、家賃を払うべくおろしたばかりのお金や、クレジットカード、在留カードも全て入れていて、どうしたらええのか途方に暮れてました。
在留カードは常に携帯しておくもので、失うとえらいことらしい。取りあえず交番に届け出たんやけど、以前の「ええかげんな話」で日本の警察はアメリカと違ってとても優しいと言っていたデシ君。警察官は親切に話を聞いてくれて、落し物の書類を作ってくれたらしいけど、心は晴れへん。もとからそんなに余分にお金があるようでもないし、デシ君、困ったことになったなあと思っていました。
そしたら、数日後、財布が見つかったとの連絡があって、お金も全て無事やったそうです。交番からは「1割ぐらいお礼をするのが普通やけど、取りあえず拾った人に直接お礼の電話をするように」と言われたそうや。
デシ君が電話すると、拾ってくれたのはやや年配の男性で、「お礼の電話だけで充分や、謝礼は要らんで」と言われたデシ君は唖然! まず警察官の親切な対応に驚き、次に財布が、お金も何もかも全て入ったまま戻ってきたことに感激、そして拾った人から謝礼も請求されなかったことに大感銘。「アメリカでは警察官が取り合ってくれないし、お金が戻ってくることもない。日本は本当に良い国。ずっと日本に住みたい」とのこと。

もう一つ、うちの孫の落し物の話。
先日、京阪電車で居眠りをして焦って降りようとした時、リュックにぶら下げていた定期券が、ドアに挟まり、車内に落ちてそのまま電車が持って行ってしもうたそうな。漫画みたいな話やけど、私に似てしもうたのか、このぼーっとした孫は、以前にも電車に財布を落としたことがあったそうで、駅員さんに定期券のことを説明すると、〇〇君やねと、すぐにわかられたみたいなんです。翌日の早朝6時半ごろに駅員さんから家に電話があって、「見つかったので、今日使えるように、駅の改札に預けておきます」とのこと。普通やったら、遠くの落とし物センターまで取りに行かなあかんらしいのに、なんと親切な。
日本人は今なお、ええとこあるなぁ。
デシ君も孫も、“ 財布は落としてもこれからのええ運は落とさんようにな!!”

Date 2019.01.01

#90 謹賀新年

Date 2018.12.21

#89 やっかいな時は・・

先日、うちの出入りの運送屋さんと、ちょっとしたトラブルがありました。
うちには、店舗のほん近くに二つ工房があって、お互いに荷物が行き来してます。

ある日、もう一つの工房に届ける荷物を段ボールに入れて置いていたところ、その荷物が行方不明になって、なんぼ探しても見つかりません。その箱には、カバンに付ける革の持ち手がどっさりと入っていて、それが見つからへんと、その型のカバンが製造できひんのです。
その荷物を置いた責任者が青くなって、両方の工房を探し回ったけど、どうしても見つからへん。
その場所には、ご注文いただいたお客様にお送りする荷物も置いておくので、そやそや、もしかしたら運送会社の集荷の人が間違って持って行ったんと違うやろうか。
それで何度も問い合わせたんですが、そんな荷物は見当たらへんと言います。
時折、下請け業者の人が取りにくるんで、その人にも問い合わせてくれへんかと頼んでも、出荷先の住所が貼ってへんもんは絶対持って行かへんの一点張りです。社内を探すのにほとほと疲れて、1週間ほど経って、責任者が致し方なく盗難届を出そうかと思い悩んでいたところ、突然「ありました」と電話がかかりました。各営業所の荷物が集まる集荷場に行先不明の荷物として置いてあったんやそうです。
“ なんでやねん!?”
責任者が謝りに来たけど、何人もが手を止めて探し回った苦労と時間はどうしてくれるのや・・。時間に追われて忙しいのはわかるけど、最初にうちからの電話を受けた人や、集荷に来る人がもう少し気を利かせて丁寧に探してくれればすぐに見つかったはずなんや。
ミスは誰でも起こりえるけど、その後の誠意のこもった迅速な対応が大事なんやのに。

うちの店では、「お客さんの対応でよっぽど困ったら私に言うてきてや」と言っています。
クレームの最後の砦は私やから、いつものゆっくりの京都弁で “ すんまへんなあ ” とご勘弁願って、ご説明すると、大概のお客様は納得してくれはります。
長年、帆布の匂いをかいできた年の功でしょうか。
何はともあれ、私の出番は無いに越したことはないんですが。

Date 2018.11.22

#88 世界は近うなったけど・・・

京へ京へと、外国からの人々の往来が年々多くなっています。これから錦繡の秋を迎えて、洛中は様々な言語が飛び交い、まさに国際都市の様相です。
うちにも海外からのお客さんが増えています。別に何の宣伝もしてへんのに、京都のこの店を訪ねてくれはるのが、なんとも不思議やなあ。
うちでも、TAXFREEをやってます。税金の使い道が腑に落ちひんので、せめて外国のお客さんからは消費税は取らんとこうと、思ってるんです。
台湾、中国を中心にアジア圏のお客さんが多いですが、近ごろは欧米からの方も増えています。わたしは日本語も喋りかねてるのに、英語や中国語は何ともなりまへん。
今は、台湾の女性と、アメリカの青年に働いてもろうてます。以前は宝塚歌劇や演歌、特に坂本冬美の歌が得意な、イタリア女性も居りました。
ところで、旅行者として来日するのと、実際に日本で暮らすのでは、またその印象はえらく変わります。日本に住んで驚いたことを尋ねてみました。

まず、イタリアのベネチア近くから来てくれていた、マデちゃん
•天気の良い日に傘をさしてる・・・イタリアのお母さんは日が差したらすぐに外で日光浴するよ。
•車内でなぜ安全に居眠りできるのか・・イタリア人は絶対寝ない(寝たら持ち物を盗られる)
(日本人は教室でも平気で居眠りしてるけど、イタリアでは先生のチョークが飛んでくる)
•恋人同士が腕を組んだり手をつないで歩かないのか・・イタリアではもっと仲良くベタベタする。

次に、アメリカから来て語学学校で日本語を勉強している、デシ君
•警官がとても優しく親切、スーパーやコンビニでもスタッフが丁寧で親切。(デシは13歳の誕生日に、父親から自分の身は自分で守れとライフルを買い与えられた。家には銃が6丁あるそうな)
(生まれて初めて電車に乗ったのは日本に来てから。夜遊びして、終電に乗り遅れて交番に行ったら、10人ぐらい警察官が集まって相談して、カプセルホテルに連れて行ってくれたそうです)
•家の前になぜ水を撒くの?(京都では今でも打ち水をする家が多いんで。)
•皆が規則を守って平穏で安心して暮らせる。(彼は子供のころからスパイダーマンが大好き、ニックネームも『スパイダーマン』。ハロウィンの日も、スパイダーマンの衣装で店に現れました。先日、原作者のスタン・リーが亡くなり、一晩泣き明かしたそうです。)

最後に台湾から来ている、黄さん
•生まれて初めて雪を見て感動した。雪の結晶が美しかった。
•なぜ、食べ物を生で食べることが多いのか。台湾の方が暑いのに、冷たいままでは食べない。
•台湾では、ATMが24時間使えて手数料も安いのに、日本は不便。

こう聞いてると、世界は近うなったようで、やっぱり遠いなあ。
わたしは、スマホも持たず(使えず?)外国語も喋れず、そやけどしばらく外国に住んでみたいんやけど。
隣から「とっくに手遅れ!」の声が・・・。

Date 2018.10.22

#87 “ 無駄は省かなあかんけど、手間・暇 惜しんだらあかん ”


帆布は厚く、硬くて扱いにくい素材で、今でも切り株の上で木槌でこんこん叩いて成形して折り目を付けてから、ミシンで縫製してます。機械でできる仕事は機械に任せたいんやけど、なかなか、そううまくはいきません。例えば「薩摩結び」と言う結び方は、麻のロープを20センチくらいほどいてから、その部分を元のロープに編み込んで、絶対にほどけんようにする作業です。
リュックの革は、セール針と言う三角の針に撚った蝋糸を通し、手作業で縫い付けてます。目の詰まった帆布に一目一目、針を刺しては抜いてゆく、力の要る作業です。
リュックに使う赤と黒のロープの先は、切りっぱなしにすると解けてくるんで、太い木綿の蝋糸を巻き付けて解けんようにします。
このような作業は昔から同じようにしてるんで、うちにしたら当たり前のことやと思ってました。
先日、ふと目にしたブログに、うちでやっている、ロープに蝋糸を巻き付ける作業をいたく感動してくれはったことが書かれていました。
その方は、何十年か前に買うてくれたリュックと、最近買うたリュックが、今も全く同じように作られていることに、驚かれたようなんです。
ブログには、「大昔から存在するものが寸分変わらず中古ではなく新品で入手できるのだ。これをしあわせと呼ばず何と呼ぶ?」
「いくら一澤帆布とはいえ、金具類、糸、布、紐などがしっかりしたものでないと存在できないはずだ。これは、そういったものを作ることのできる小さな会社やお店が存在してこそ、可能なはずなのである」
「僕は京都の一澤帆布に行くたびに、全国の街が京都のように、または一澤帆布のように存在できる状況であったら、どんなに良い事だろう、と思うのである。」


ほんまにその通りで、うちがこれまでどおりの品質を維持、向上するためには、良質の綿帆布、麻帆布はもとより、天然素材のバンドやテープを織ってくれる会社や、強固な糸や金具を作ってくれる会社は無くてはならない存在なのです。材料だけやなくて、毎日使うハサミを定期的に研いでくれるお店や、作業に使う道具の一つ一つを製造してくれている工房も、無くなってしもうたら困るんです。
「紐の先端はなんと、糸を巻いて蝋で固めてある。こんなディテールも昔と変わっていない。・・・今時こんなしごとをわざわざやるメーカーはどのぐらいあるだろう?」

こんなところに目を留めてきちんと見てくれはる人がいて、こんなに喜んでいただけるんやったら、やっぱりかばんを丈夫で長持ちさせるために、手間・暇惜しんだらあかんのですなあ。
“ これしかできまへんが、これだけはよそさんには負けまへん ” という専門店が日本中に増えてほしいもんです。
時代に遅れ続けてるうちのあり様は、そう的外れでもなかったんやなあ。